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グローバル人材は踏ん張り力

 

各省庁で定義づけされている謎だらけの「グローバル人材」

文部科学省…  世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立っ て培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と 協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間。

 

総務省… 日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・ 積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材

 

難しい表現なので、簡単に言えば、「不慣れな土地に一人で出向き、カタコトの現地の公用語を見よう見まねで話しながら、こちらの意図することを伝え、また相手の要望も受け入れながらうまく調整し、物事をなんとか踏ん張って推し進める力」であると言えます。

 

もっと分かりやすくイメージしていきましょう。

 

国際協力という仕事の泥臭さ

あなたは日本を代表するJICAの職員だとします。

 

ご存知の通りJICAは、 開発途上国の「国創り」を目的に、途上国の多様な課題解決に取り組んでいます。政府開発援助(ODA)実施機関として、技術協力、円借款、無償資金協力などの形成・実施・評価を担います。

 

日本人のあなたは、英語は勉強して得意でしたのでJICAに入職することができましたが、入職後5年目に中南米に語学研修を行くことを命じられます。そこであなたは、公用語がスペイン語であるメキシコに1年間語学力向上のために赴任します。その後、一時帰国したのちに、今度はペルーのJICA駐在員として赴任を命じられます。語学研修だったメキシコでは、JICA職員として直接的な会議や事業に参画することはありませんでしたし、メキシコはぎりぎり英語も一部通用したのでなんとかコミュニケーションが取れていましたが、今度は具合が違います。

 

30歳手前のあなたは、まだまだおぼつかないスペイン語で、JICAペルー支社駐在代表として事業を推進することが使命となります。ペルーでは、もちろん英語や日本語は一切通じません。人々と、覚えたてのカタコトのスペイン語を使いながら意思疎通しなければなりません。

 

内容を全然覚えきれない中、やってもやっても終わらない量の仕事と、事務所内の会話含めて仕事の7割を占めるスペイン語に泣きそうになりながら、なんとか生きていかなくてはなりません。それがあなたの役割であり、仕事だからです。大問題ごろっごろしている中、偉大過ぎる前任を持つと相当辛い状況であると思います。

 

そこでの任務は、 州高地アマゾン地帯の162のコミュニティで水道施設やトイレを建設する事業です。毎朝5時起き、後部座席のシートベルトの重要性を痛感し続けたガッタガタな道と、着いてからの登山もかなり大変です。さらに工事の説明も州政府との会議もスタッフとの会話もスペイン語が全部はわからなくてかなりしんどく、投げ出したくもなりますが、なんとか一部のコミュニティの完工式に出席してきました。

 

そこでは、ペルー側担当副大臣や日本の臨時代理大使もご出席。本当大変な事業だと思っていましたが、毎日ヘルメットと作業着を着用し、現地の方々と意思疎通を図りながら推進できた事業。現場を訪れて子供たちの笑顔を見た時に、このプロジェクトの重要性を実感できました。

 

さて、JICAの本業は国際協力ですが、日本企業の海外進出支援もしています。ペルーに赴任して2ヶ月間右も左も分からない中、暗中模索で準備を重ね、日本の中小企業11社の皆さんをペルーにお招きして1週間のアテンド、今日はビジネスマッチングセミナーを開催しました。参加企業とのマッチングに関心のあるペルー企業が35社集まって、なんとか形になりました。本業が忙しすぎる中の準備、毎日本当に泣きそうでしたが、JETROさんや日ペルー商工会議所、日系人協会、ペルー政府各省庁のお力も借りつつ、なんとか参加企業の皆さんから、ありがとうという言葉をいただき満足してくださいました。

 

そんな矢先、今日の忙しさは異常でした。朝から、建設省大臣と副大臣面談の同行、本部から来ている部長、課長とそれぞれ打ち合わせ、ピウラ水道公社との打ち合わせ、明日から来る中小企業の方々10人のミッションの受入に向けた旅行会社との打ち合わせ、リマ水道公社との合意書の締結。

 

息つく間もなく席に戻ると、立て続けにスタッフに相談を求められ、見なければいけない書類も山積みで、メールもちょっと離席しただけで平気で40件溜まります。そして、今夜は大使公邸で夕食会がありますが、体調が優れません。意識もうろうでフラフラになりながら参加し、その日は疲れてすぐ寝ました。

 

そして、一番大きな問題は、そのような会議で相手に伝わるようなスペイン語で理路整然と話したり、向こうが言っていることを全部は理解したりすることができないことです。内容が複雑過ぎて、皆さんの話すのが早過ぎるのです。しかし言い訳は通用しません。あなたはJICAペルー支社駐在員代表です。

 

スタッフは毎日話しているので、つたないスペイン語でも分かってくれますから、毎回の会議で言わなければならないことを事前に伝え、詳細部分はバトンタッチして代わりに発言してもらうようになんとかしのいではいるものの、駐在員としては一人前とは言えません。

 

気力・体力・知力・語学力を総動員で乗り切る

さて、一見華やかに聞こえる、省庁が定義づけしているグローバル人材という言葉。カッコよくてきらびやかに見える国際協力というJICAの仕事。そんなものは、机上の空論であり現地では全く通用しません。そこにあるのは、日々積みあがる課題の山と、それでも進めなければならない業務であり、そこで求められるのはスマートさでもきれいごとでもなく、「目の前の業務をなんとか踏ん張ってやり抜く力」です。

 

前置きが長くなりましたが、本来求められる能力とは、その現地において、ほとんど分からない現地の公用語の中でなんとか食らいつき、毎日必死にもがきながら膨大な量の業務に追われながらも努力と根性で踏ん張ってやりきる力。

 

 

それこそが、これからの社会に求められるグローバル人材なのではないでしょうか。

 

by 就活・転職アドバイザー :
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