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インフラ企業のカルチャーとは

公共インフラという世界

昨今、自然災害が多い中で、日々の生活の当たり前を支えている電気、ガス、水道といったライフラインや、物流、通信等いわゆる公共インフラと呼ばれる産業の重要性を感じている人もいるのではないでしょうか。

 

本日はその中でも、元々国営であった旧電電公社であるNTTグループと、歴史的に国とつながりが深い電力会社にフォーカスし、地元が仙台の2人の新卒を主人公に、A君はNTT東日本に、B君は東北電力に入社した1年目の姿から、インフラ企業の特徴をお伝えします。

 

院卒技術職のA君、文系総合職のB

東京の理系大学で工学を学んだA君は、院卒でNTT東日本(東日本電信電話)へ技術職として採用されました。

彼は、首都圏勤務を望まず、事業所が小さいからこそ多岐にわたる業務に携わることができそうだという考えから地方勤務を望み、希望通りに赴任地は秋田事業所でした。通信は、その役割を外部と内部に分けるとすると、外部は鉄塔をつたう電線の工事から保守が思いつくでしょう。内部は、企業のネットワークインフラを24時間絶やさず安定稼働させるための保守管理という仕事があります。個人宅で言えば、WiFiが常につながっている状態を安定維持させるような仕事です。A君は、内部の企業向けネットワーク管理配属になったので、わからないことも積極的に先輩社員に聞きながら日々オフィスビルを回り、仕事をこつこつ覚えていきました。

 

さて、B君は、東京の文系大学を卒業し、東北電力に文系総合職として入社しました。スキーが趣味だったので、スキーができればどこでもよいという希望を出していたので、新潟事象所に配属となりました。東北電力は東北6県だけでなく、新潟の事業エリア内です。電力会社の基本は目の前のお客様にまっすぐに向き合うことです。東北電力のスローガンも「より・そう・ちから」。そんなわけでB君は個人のお客様対応が初部署となり、お客様のから電気に関する開設、閉設、最適なプラン提案等を行う仕事になりました。中でも、オペレーターが対応できないイレギュラー対応のみ任される部署で、先輩を見よう見まねでマニュアルに沿いながらお客様対応の力を磨いていきました。総合職の自分がオペレーター?と最初は首を傾げましたが想定内でしたし、まずはしっかり現場の最前線で知識や対応力を身につけようと前向きに取り組みました。

 

 

A君、B君両者に共通していたいことは、配属はほぼ希望通りで、最初の仕事も想定していた仕事であったこと。そして、なにより周囲の先輩や上司の方が皆優しく丁寧に教えてくれる環境でした。もちろん、入社1年目ですから分からないことばかりですし、初めて覚える知識や技術の連続ですので、時には困ること、悩むこと、落ち込むこともありましたが、なんとか乗り越えてようやく3か月が過しました。そんな中、東北6県のお祭りに全部参加するというお達し(業務命令)を受けました。ただ、これは珍しいことではなく、もともと地域に根差した大企業は、その広域エリアの中でその地域ごとの個人や企業とのつながりをとても大切にしています。というか、大切にしないと仕事がうまく回らないという実情もあります。よく言えば地域住民や企業との連携を名目とした社会活動、地域貢献活動ですね。

 

大げさに言えば、1年目は上司や先輩からいかに好かれ、いかにうまく懐に入っていけるかがその後の昇進昇給を決めていくのかもしれません。仕事がスピーディにできることよりも、接待や幹事や盆踊りが得意な人の方が仕事がしやすい傾向にあることも事実です。もちろん、社内営業や地域のイベントに夢中になって本来やるべき仕事をきちんと果たさないというのは本末転倒ですので、やるべきことはきちんとこなした上でという前提になりますし、2年目、3年目からはまた違った能力が要求されます。

 

さて、当日のお祭りには、お得意先はもちろん、地元の銀行、保険、不動産業者など多くの個人や団体が参加しますから、参加するNTT東や東北電力としても「本気」で参加します。こんなもの仕事と関係ないと言ってしまえばそれまでですが、来年以降はお祭りに参加しなくてもよい代わりに、先輩や上司との人間関係が悪くなり、本来業務が滞るので半ば強制的参加です。また、本来土日は休みですが、お祭りは基本的に土日にありますので、休日出勤で本番に向けて練習した盆踊りの成果を発揮することになります。

 

平日仕事でめいっぱいな中で、週末の祭りの準備や接待の準備で7月、8月はクタクタになった二人。なんせ、地元だけではなく、東北6県のお祭りすべてに参加したのですから。そもそも本来業務とお祭り参加に直接関係があるのかと思いながらも、同期が居ることが彼らの心の支えとなり、横のつながりで励まし合いながら他部署の仕事や環境、人間関係も少しずつ構築していくことができました。

 

本社と支社、大卒と高卒、技術と営業

もう1つ、壁にぶつかった二人。それは、部署や学歴等の差よるコミュニケーションの隔たりです。実際、NTT東日本の工事部A君は、違う階に属する営業部との連携が不足していると感じていましたが、技術は技術、営業は営業と仲良くなる傾向が強く、飲みの場でお酒を注ぐ順番でさえ、営業部には後回しにしろと先輩に注意されたほどでした。それでも、部署内の雰囲気がよければそれでも良いと割り切っていましたが、たまにやってくる本社の営業部員から目の敵にされて理不尽なクレームをつけられた時には、普段温厚なA君も言い返したほどでした。

 

一方、東北電力のお客様対応業務に携わるB君は、癖の強い高卒の先輩社員に悩まされていました。彼は「地元採用」なので、ずっと新潟から離れません。長らく仕事をしてきたのでプライドもあります。そのようなエリア採用社員は、総合職で転勤が必須であるB君のようなプロパー社員を「いつかこのエリアから離れる人」としか見ません。それで嫌がらせを受けることはないのですが、人の心理的には、ずっと同じ場所に居る人と、いずれ転勤する人であれば前者をかわいがるのは理解できます。

 

 

自分が所属するカテゴリー以外の人間を警戒し排除したがる習性は歴史のある伝統的な日本企業に多い傾向です。それが、非協力的なセクショナリズムの原因かもしれませんし、1年目でぶつかる最大の壁なのかもしれません。特に、護送船団方式で国から長らく守られてきたような電気や通信といった公共インフラ企業には、古くからそのような縦割りで前例踏襲、形式かつ保守主義であることが多く、皆で協力して何かを成し遂げようという空気を作り出すことに長けている人は少ないかもしれませんし、スピード感や変化に対応する力が諸外国に比べて弱いです。例えば、1つの稟議を通すまでに直属の上司から始まるスタンプラリーが5つも10こも要するということもざらです。

 

 

公共インフラ企業は雇用も仕事も給料も安定していて一生安泰。

ある意味では公務員気質かもしれません。しかし、そのようなある種閉ざされた環境で生き抜くには、改革や改善、企画や提案よりも、誰からも嫌われずに従順に、言われたことを言われた通りにというスキルの方が生きてくるのかもしれません。また、電気や水道が止まっては困りますし、通信や物流が遮断されては人々の生活に重要な支障をきたします。そのため、ミスや間違いは絶対に許されず、一歩間違えれば多大な住民、企業に迷惑をかけることになる公共インフラという産業。だからこそ、ライフラインや社会性、公共性の高い仕事に携わる者は、人々が生きていくために欠かせないものを運営していくという強い責任と使命が伴います。当たり前の日常を当たり前であるかのように裏方としてサポートし、24時間体制で安定稼働を目指し、地域と共に、地域のために生きていく。そのような気概のある方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。