「物流業界」は本当に地味でつまらない?
*社会生活を根底から支えるインフラ
*人が生きていく上でなくてはならない
これらを就活の軸に据えると、例えば電気、ガス、水道、エネルギーなどのいわゆるインフラ産業が浮上します。
「社会のあたりまえを支える」という働き方を軸に就活を進めている方も居るでしょう。
そのような意味では、モノを運ぶという「物流業界(ロジスティクス)」もれっきとした社会インフラを支える業界です。
例えば、
・人やモノを線路というレールに乗せて鉄道で輸送する仕事
・コンビニや自宅へ食材などの生活必需品をトラックで届ける仕事。
・鋼材や半導体など経済活動を行う上で必要な商材を企業へ飛行機や船で届ける仕事。
適切な時期に適切な管理で適切な量を徹底したコスト調整で管理・保管・配送し、取引先にお届けする。
3.11でも経験したように、物流ラインが途絶えたら、いつも「あたりまえに」店舗に並んでいる商品が届かずに、日常はパニックに陥ります。
さて、物流業界の一般的な企業名称は、
・◯◯物流
・◯◯ロジスティクス
・◯◯エクスプレス
・◯◯倉庫
などです。
ただ、日本通運や山九やケイヒンなど、必ずしも上記に当てはまらない物流企業もたくさんあるので調べてください。
また、よく「海運業界」や「航空業界」という区分けで業界地図に区分されていますが、日本郵船もJALもANAも、大きなくくりで言えば「運輸業界」であり、船や飛行機は人も運びますがモノも運んでいるので「物流業界」でもあります。
それを、航空輸送、船舶輸送、鉄道輸送と便宜的に区分されているだけであり、海や空を業界の視野に入れている方は、使命の根幹にはA地点からB地点へ人やモノを運ぶというものですから、「物流業界」も見ることは当然です。
また、近年では、ネット通販などEC(電子商取引)の拡大により、三井不動産や野村不動産、大和ハウス工業や東急不動産などの大手総合不動産もこぞって大型物流施設の新設に乗り出しています。
さらに、総合商社ではモノや人や金やサービスの手配をする際には、その系列の物流企業や倉庫企業と連携してプロジェクトとして進めていきます。
ですから、海運や航空業界、不動産デベロッパーや総合商社を見ている方が、密接に関連している「物流業界」を外す事があり得ないのです。
それでも、なぜ「物流業界」だけ嫌われてしまうのか。そこには、物流業界につきまとう、大きな「2大偏見」があります。
(1)トラックの運転手になりたくない
(2)なんとなく地味で人と関わりなさそう
まず、1つずつ誤解を解いていきます。
(1)については、身近なイメージで佐川急便やヤマト運輸のように、物流と言えばトラックで荷物を運ぶ。
Amazonや楽天を日常的に利用していると、どうしてもそのような「作業着を着てダンボール抱えてトラックでモノを運ぶ」という仕事に結びつけてしまいます。
確かに、そのような業務もありますが、大卒で採用される場合にはトラックを運転することはありません。業者へ一任します。
また、(2)については、物流施設でモノの管理や保管をする、いわゆる「倉庫番」的なイメージからくるのかもしれません。
しかし、倉庫や物流施設でラインに流れてくるダンボールの検品や保管、荷捌きを行なったりするような現業を行うことは殆どありません。
実際には殆どコンピュータで自動制御されロボットが活用されている事が多いため、自動運転のシステム管理か、あるいは人手が必要なライン作業にはアルバイトやパートの方へお願いする事が殆どです。
そのようなわけで、物流事業の2大偏見は間違いです。それだけの理由で社会インフラを支える物流業界を切るのはあとあと手駒が少なくなった時に危険です。
では、実際なにをするのか説明します。
◆ざっくり言えば「通関」と「営業」と「オペレーション」
まず、通関業務についてですが、モノが国を超える時、輸入物に税金をかけるので、そこには通関業務が関わります。
また、モノによっては、食品に該当したり、危険物に該当したり、通関に関する資料の読み込みと区分は、分厚い専門書と照らし合わせて行われます。
確かに地道な作業にはなりますが、遵法精神に則り、あらゆるモノの輸出入に関われるため、仕事そのものが意外にワクワクします。
「今日はどんなモノが届くのだろう。」
参考
旭運輸株式会社
https://www.auk.co.jp/trade_custom.html
参考
近鉄エクスプレス
http://www.kwe-saiyo.com/work/tsuda.html
◆とってもコンサルティングな営業
例えば、現状の取引顧客に対して、今どのような課題を抱えていて、自社を利用することよりメリットを提供できるのか。
顧客の潜在・顕在ニーズを徹底して掘り下げてヒアリングすることで交渉テーブルへ持ち込みます。時には競合(コンペティション)で勝ち取ることになります。
参考
日立物流
http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/recruit/work/n-kihara.html
顧客は食品や化粧品、日用品メーカーから、鉄鋼、自動車、太陽光パネル、半導体メーカーまで幅広いです。
また、顧客開拓から提案、成約、実行、フォローに至るまで全て一人で行うのではなく、チームプレイとなります。
顧客にとっては「物流=コスト」なので、最も安く、早く、を実現するために、飛行機や船の運行スケジュール、通関手続き、コストをはじいて最適な提案を行います。
まさに、コンサルティング提案営業職です。
参考
三菱商事ロジスティクス
http://recruit.mclogi.com/sp/people/index.html
近鉄エクスプレス
http://www.kwe-saiyo.com/work/ito.html
さらに、顧客の獲得だけではなく、物流施設の新規設立のオペレーションなども担うため、「建設業」的な立場で現場の陣頭指揮を執ったり、多くの関係者を巻き込み目標に向けて取り組む姿勢ややりきるチカラが求められます。
◆営業と顧客の橋渡しなオペレーション
オペレーションとは、船会社や航空会社の貨物スペースを確保し、顧客にとってどのような輸送ルートが最適かつ低コストなのかを勘案しながら、各キャリア(船や飛行機を所有する企業)と交渉、調整を行うのがフォワーダーと呼ばれる総合物流企業におけるオペレーション業務です。
参考
近鉄エクスプレス
http://www.kwe-saiyo.com/work/tsuji.html
時には、台風が接近し予定していた定期便に不具合が生じて納期に間に合わない。
混載スペース余力が無く、他の輸送手段へ切り替えなければならないが、顧客の予算をオーバーしてしまい持ち出しになる。
そんな、ドタバタな状況を冷静かつ迅速な判断と決断力で業務を遂行する能力が要求されます。
営業が担う場合と、CS部門としてオペレーションを切り分けている場合とがあります。
参考
郵船ロジスティクス
http://www.jp.yusen-logistics.com/recruit/shinsotsu/staff/customer01.html
◆オフィスワーク×フィールドワーク
営業はもちろん、通関もオペレーションも現場作業もあれば、オフィスワークもあります。
決められたことを、決められた通りに、時間内に着実に遂行することが長けている人は、営業よりも通関業務の適性が高いです。
関連法令に則り、取り扱えるものは取り扱えて、ダメなものはダメだからです。膨大な資料の読み込みや、法令・法制を厳守しながら、迅速的確な対応が要求されます。
とはいえ、羽田や成田や関空などに勤務して、税関職員と時には一緒になって届いた荷物の開封や梱包も行うため、体力も使います。
通関業務については、オフィスワークというイメージでを外した方がよいです。まずは現場を知るという意味で、営業の前に通関業務に配属されるパターンが多い気がします。
その後、営業に配属となり、本社部門での物流資材の適切なタイミングと量を把握し、届け先へ時間内に低コストで配送するという手配や調整を行うことがメインです。
営業が単体で顧客との折衝や交渉を行うこともありますが、オペレーション部門や物流センター、配送部門や通関などとチームプレイで仕事を進めたす。
そのため、個人で成果を上げたいという人よりは、チームで目的を達成したい人向きです。既存顧客だけではなく、新規顧客をコンペだけではなく、アポ取りから始める事もあるので、いわゆる営業マインドも必要です。
オペレーション(CS部門)は、とにかくバランス感覚と突発的状況における臨機応変な対応です。前述のように、予定通りに予定量の貨物が届かないような事が発生しそうな場合には、次の一手を瞬時に判断し、営業や関係外部業者やキャリアへ交渉します。
ですから、じっくり物事を考えて答えを出すタイプよりは、多少せっかちな人の方が合うかも知れません。
以上ざっくりですが物流業界の仕事についてでした。
部門や携わる仕事によって業務内容や要求される能力は異なるものの、顧客から預かった大切な荷物を、予定通りに届けるという責務のもと、多様な社内外の人間と関わり合いながら、動きのある仕事だという事がご理解していただけたら幸いです。
食わず嫌いは視野を狭めるため、ぜひ一度足を運んでみてください。